先週、米労働省労働統計局が発表した令和3年5月の米消費者物価指数(CPI)は予想4.7%に対し5.0%という結果でした。令和3年4月のCPIは4.2%であったため、5月・6月のCPIが上昇傾向にあればFOMC(連邦公開市場委員会)がテーパリングに踏み切る懸念があります。
そこで、今回のCPIの結果がインフレといえるのか、テーパリングに踏み切る可能性があるのか考察していきたいと思います。
消費者物価指数(CPI)とは?
(参照:ヤフーファイナンス)
最近、ニュースや新聞などで消費者物価指数について話題となっていますが、消費者物価指数とはどういったものなのでしょうか。
米労働省労働統計局が毎月発表する統計で、消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための統計指標です。また、国民の生活水準を示す指標のひとつとも言えます。米国のインフレ率を分析するための最重要指標です。(参照:ヤフーファイナンス)
インフレ率は日本銀行と同じ機能を果たすFRB(連邦準備理事会)も特に注視しているため、投資家の間ではFRBがインフレ対策を行うのか否かを議論しています。
FRBの経済目標
FRBには金融政策を通じて2つの経済目標を達成しようとしています。
・雇用の確保
・物価の安定
日本銀行の目的は物価の安定と金融システムの安定となっていますので、どの国も中央銀行の役割の一つとして物価の安定が重要になってくるといえます。
では、それぞれの経済目標について確認していきましょう。
雇用の確保
雇用の確保とは具体的に、失業者数を抑えることと最大の雇用者数を確保することです。
人は仕事をしなければ生きていけません。コロナショックをはじめとして、今までの〇〇ショックと呼ばれるような景気不安時には多くの失業者が発生しました。つぎの仕事を見つけるまでに貯蓄を使い果たし、家を失う可能性さえあります。
そこでFRBとしては国民の雇用の確保が出来るよう金融政策を行っているのです。
主な指数にはつぎのようなものがあります。
非農業部門に属する事業所の給与支払い帳簿を基に集計された雇用者数の変化を毎月発表しています。
失業者を労働力人口(失業者と就業者の合計)で割ったものです。非農業部門雇用者数と同じくらい重要な指標です。
2021年以降の非農業部門雇用者数は平均40万人の雇用が毎月生まれ、失業率も右肩下がりを推移しています。
ただし、コロナショックが起こった2020年4月には2,000万人もの人が職を失い、失業率は15%まで上昇しました。6人に1人が職を失った計算です。
新規雇用者数が毎月安定しているとはいえ、雇用の回復にはもうしばらく時間を要するでしょう。
物価の安定
物価の安定とは具体的な数値としてインフレ率2%を目標に掲げています。
なぜインフレ率を目標にするのかを考えてみましょう。インフレ率、つまり物価が安定していない経済を考えてみます。
あなたがソフトクリーム買おうとしています。
今日の価格は100円でした。
~翌日~
ソフトクリームの価格を見ると。。。
1万円に!
物の値段が安定していなければ、人の消費活動に影響が発生します。今回はアイスクリームで例えましたが、これが家や車だったり食料品であれば安心して生活が出来ません。
そこで、物価の安定が必要というわけです。
インフレの要因
インフレが発生する要因は大きくわけて二つあります。
それが需要インフレと供給インフレです。今回のインフレ率上昇の要因は明らかに供給インフレですので、それぞれの違いも確認しながらどのようなことが起きているのかを確認していきます。
需要インフレ
需要インフレとは、モノの需要が高まることで価格が上昇していく状態をいいます。日本でも不動産バブルといった需要インフレが過去に起こっています。
1980年から1990年頃の不動産バブル時には、地価が暴騰していました。
当時の銀行も不動産の転売を後押しするように融資をドンドン行っていたのです。
土地を買った人も、1億円で買ったモノがまだまだ上がると信じていたので融資を通じてガンガン買っていました。
しかし、日本銀行がインフレを懸念し金融引き締めを行えば、たちまち市中銀行も融資を抑え始めます。
不動産が欲しくても銀行が融資してくれなければ購入することが出来ず、今まで活発だった不動産の取引が衰退し、値段を下げなければ売れない状況になったのです。これがバブル崩壊のきっかけです。
中央銀行としては需要過多によるインフレには特に注視しているように思います。
供給インフレ
いっぽう、供給インフレとはどういったものなのでしょうか。供給インフレとは生産コストの上昇によって起こるインフレのことをいいます。
アメリカでは大規模な財政出動によって、働くよりも失業者としての給付金を受け取る方が稼げてしまうという状況になりました。
働かなくても給付金によって生活が出来るのであれば無理に働こうとせず、採用する側としても高い賃金を払わなければ雇用を確保することが難しくなりました。
人件費の高騰によりモノやサービスの価格を上げざるを得なくなり、インフレが発生したと言えます。
また、今回のCPIを項目別に掘り下げると中古車価格が21.0%も上昇していますが、上昇要因は半導体不足だといわれています。
大手半導体メーカーの工場火災によって世界的に半導体不足に陥りました。自動車産業も例外ではなく、自動車の製造には多くの半導体を必要とします。
製造が難しくなった新車で車を購入しようとせず、中古車市場で車を購入しようとする人が増えた結果、中古車価格の上昇につながりました。
金融政策によってインフレを抑えられるのか?
たとえば、FRBがインフレを懸念し金融引き締めを行ったとして、半導体不足を解消できるでしょうか?

私の結論としてはNOです。
今回のCPIが上昇した要因は人件費の高騰や半導体不足であり、仮にFRBがテーパリングを行ったとしても根本的に解決できるわけではないからです。
また、コチラのグラフをよく見てください。
4月の4.2%や5月の5.0%の数値は前年同月比です。
2020年4月以降はコロナショックによって大きくインフレ率は低下しています。基準となる前回の数値が低ければインフレ率は高くなるのが当たり前ですので、5.0%についてあまり考えるべきではないと思います。
市場予想も4.7%と高水準でしたので、ある程度予想したとおりなのではないでしょうか。
まとめ
毎月発表されるCPIは物価の推移を示す重要な指数であり、その結果によってFRBが金融政策を行います。
ただし、今回のようなインフレ率上昇の要因は財政出動による人件費の高騰や半導体不足による中古車価格の上場が主な要因であり、それに加えて前年同月の数値が4月0.3%、5月0.1%と低水準にあった為です。
テーパリングと騒がれる中で、FRB首脳陣も「インフレは一時的なものである」と語っているため、私たち投資家としては引き続き株式投資を行えば良いのではないかと思います。

どちらにせよ、今週のFOMC会合を待つしかありませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。